運動回数を重要視しないこと
筋トレや練習など、10回5セットとか、素振り100回とか、投球100球とかやりますよね?
回数を目標にすることは一定の価値があります。反復運動による動作全体の筋力の強化や持久力強化など。
しかし、プロが患者に行う場合や、パフォーマンスアップの練習の場合、回数を重要視するとマイナスに働く場合があります。
同じ運動を10回行うのと、1回を10セット行う、という意識の持ち方で結果が変わってきます。今日はその辺りをお伝えします。
目次
10回1セットと、1回10セットは同じ10回でも全く違うことになり得る
「はい、じゃあこの運動を10回やりましょう」
「素振り100回」
「今日は80球投げようか」
「100mダッシュ10本!」
このように目標を決めることは重要ですよね?
スタミナもつきますし、力にもなりますし、達成感も得られます。
でも、患者さんに指導する時や、特定のパフォーマンスを向上させようとする時、回数はあまり考慮に入れない方が良いと思っています。
限られた時間の中で運動回数をこなさせることで、時間のコントロールにもなるし(時間潰せるし)、(効果が無くても)達成感を得てもらうことはできますよね?
運動の指示を出しておいて、別の患者さんをさすりながら、さらに別の患者さんとおしゃべりしたりしていませんか?
もしそんなことをしているなら、即刻修正した方が良いです。
もし自分がリハビリ室でそのような扱いをされているなら、即刻やり方を変えてもらうか、担当を変えてもらうか、病院を変えるべきです。
回数を決めたとしても、その運動の目的をはっきりさせておかなければ、効果は薄れます。
スクワットをして膝を痛くした方もいるのではないかと思います。
スクワットはたくさんの筋肉を使う良い運動ですが、正しくやらなければ膝や腰、股関節を痛めやすいです。これを10回やろうとすると、正しい姿勢を保ちつつ行う、というところに意識が行かなくなります。よくあるパターンは膝がつま先より前に出てしまうことですが、
これによって膝の前にかかる負担が大きくなり、膝を痛めると言われています。
これをしどうしているセラピストでよく見られるのが、膝が前に出たら注意して、回数を重ね、連続して前に出ても注意して続け、というやり方で設定回数をこなさせ、
「膝を出さないでやりましょうね」
と注意をして終わる、というのを見かけます。
これはセラピストが膝を壊していると言っても過言ではありません。
そもそも、患者さんが気を付けても膝が前に出てしまうのは、前に出るのを抑える筋肉が上手く働いていないからです。まずはそこを解決しなければ、正しい姿勢でスクワットをすることさえできません。このような状態でこなす10回は害の方が大きいと言えるでしょう。
素振り100回を考えてみましょう。
素振りはそもそも、スイングの筋肉を鍛える、スタミナを付ける以外に、
「自分の思い通りの軌道を振る」
という目的が有るはずです。
「スイングスピードを上げる」
というのもあるでしょう。
100回振ればこれが上手くなるとは私は思いません。
スイングの軌道であれば、1回1回どのコースを打つつもりで振るのか、を決めて振り、思った通りの軌道で振れるのかどうか、そのコースが完璧に振れるのであれば、そのコースを延々と繰り返すことに意味はありません。別のコースを練習するべきでしょう。また、決めたコースのスイングが思い通り振れない、しかも段々軌道が悪くなっていくのであれば、少し休憩するか、そのコースを思い通りに振るためのどこかの筋力が足りないことに気付き、そこを鍛えた方がいいでしょう。
この、スクワットにしろ、スイングにしろ、毎回毎回フィードバックし、新たな気持ちで行う、ということが1回を繰り返すということであり、「○○を何回」と、回数を重視するな、ということなのです。
これが効果的だというエビデンスはありませんし、これをエビデンスという形で証明しようとするのは相当難しいことでしょう。しかし、その違いは誰にでも実感できるはずです。
JTAを行う上で私が行っていること
これは笹川先生から教えられているわけではなく、このやり方は感覚の要素も強いため、私が独自に行っているものです。
JTAではひとつの運動を6秒3セット(セルフケアの場合は10秒3セット)くらいで行うのが普通ですが、私はこの1回に以下のことをチェックしながら行っています。
・力の立ち上がりはどうか?
・代償運動は出ていないか?
・収縮開始から終わりまで、力は一定か?強くなるか?弱くなるか?
など。
2回目は上記に加え、
・1回目と力の強さは違うか?
など。
をチェックしています。
2回ともバッチリと力が入っているのであれば、3回目は省略することも多いです。
代償動作が出たら角度を変えて軽い負荷で行います。それは6秒させる前に、即です。
場合によっては別の筋肉を働かせてからそこに戻ることもあります。
弱いけれど、少しずつ力が出てきている場合は、回数を増やすこともあります。
そしてその後に、痛みや動きが改善しているかどうかをチェックします。
良い変化が出ていれば良し、痛みが強くなったり、動きがおかしくなっていたら、そこを改善させるために必要なことを行います。それは先ほどやったことが間違いの証しだからです。JTAの素晴らしいところのひとつは、JTAで悪くなったと思える場合、JTAで解決できることです。
効果判定はできるだけ短く
「筋肉が太くなるのは時間がかかるから、この運動の効果が出るのは時間がかかります」
という言葉を聞いたことがあるかと思います。これは大嘘だと思っています。
前半は真実です。しかし、筋肉は太くならなくても一時的に筋力を上げることはできます。それは神経から筋肉を働かせる命令の量を増やすことです。
で、それはすぐに達成できるため、必要な運動であればその場で良い効果が出るのです。
セラピストとしては、自分のやった内容が正しいのかどうか、その効果判定を極力短いサイクルでやった方が良いでしょう。
そのためにも、ダラダラと10回やればいい、というのではなく、正しくできた1回を繰り返す、ということが重要になります。
これを変えるだけで、今まで行ってきた治療法でも効果を各段に上げる可能性があります。
セラピストには是非試していただきたいですし、患者さんにはこれができていない担当者には、成長してもらうか、担当を変えてもらうか、病院を変える方が良いです。